研究概要

September 03, 2010Posted by kunishima

 

 私たちの身体を作る主要な生体分子であるタンパク質,脂質,糖質,核酸には酸アミドやエステルを有するものが多くあります。同じように医薬品のおよそ半分はアミドやエステルを分子構造中に含んでいます。 この事実を背景に,私たちはアミドやエステルの効率的な構築法の開発は,医薬品開発や生命現象の解明において画期的な技術を提供できるものと確信し,アミドやエステルの最も一般的な合成法である脱水縮合反応を中心に置いた新しい反応システムの開発や応用研究を行っています。

1.水中で利用できる脱水縮合剤の開発
2.酵素の機能を模倣した分子触媒の開発
3.界面を反応場とする脱水縮合反応とその応用
4.生体分子の機能解明を目指した化学的手法の開発
5.タンパク質の安定化や機能解明を目指した新しい化学修飾法の開発

水中で利用できる脱水縮合剤の開発

September 03, 2010Posted by kunishima

 

1,3,5-塩化トリアジンの反応性を解明し,この化合物の誘導体として新しい脱水縮合剤DMT-MMを合成開発しました。DMT-MMを用いるとこれまでの常識を覆して水やアルコール中でカルボン酸とアミンの脱水縮合反応が進行することを明らかにし,糖や核酸など水溶性の極性化合物におけるアミド基導入の簡便法の道を拓きました。
Tetrahedron, 1999, 55(46). 13159-13170.

酵素の機能を模倣した分子触媒の開発

September 03, 2010Posted by kunishima

 

酵素は高い特異性や反応加速を示す究極の分子触媒であり,その触媒機能の発現には誘導適合効果やアロステリック効果など,様々な原理や仕組みが用いられています。このような機能を分子レベルで解明し化学反応に利用することができれば,医薬品合成に役立つ様々な新しい技術を開発できると期待されます。私たちはホストーゲスト相互作用に基づく分子認識を活用した人工アシル基転移酵素を開発し,その触媒機能の解明,特異性や反応加速の向上,不斉合成への応用などを課題として研究を行っています。
J. Am. Chem. Soc. 2001, 123 (43), 10760-10761
Angew. Chem. Int. Ed. 2006, 45, 1252-1255

界面を反応場とする脱水縮合反応とその応用

September 03, 2010Posted by kunishima

 

ミセル界面では加水分解反応が著しく促進されることが古くから知られています。その加速原理は両親媒性分子の自己集積による局所濃縮効果と基質が反応の進行に都合の良い向きをとる前配向性効果にあります。私たちはこの効果を利用し加水分解の逆反応である脱水縮合反応もまた大きく加速されることを初めて示しました。この発見に基づいて界面場の効果を解明すると共に分子運動制御に基づく様々な効率的反応の開発を行っています。
Angew. Chem. Int. Ed. 2005, 44, 7254 -7257

生体分子の機能解明を目指した化学的手法の開発

September 03, 2010Posted by kunishima

 

化学反応によって誘起される生体膜融合法の開発
上記の界面での反応を用いて,生体膜を構成する脂質を膜内で縮合反応よってセラミドへ変換すると膜融合が誘起されることを明らかにしました。これは化学反応だけで誘起される初めての膜融合モデルであり,このシステムを用いて融合や分裂など,膜の形態変化の分子機構解明を目指して研究を行っています。
J. Am. Chem. Soc. 2006, 128 (45), 14452-14453

タンパク質の安定化や機能解明を目指した新しい化学修飾法の開発

September 03, 2010Posted by kunishima

 

ポストゲノム時代に入りタンパク質機能の解明がいっそう重要な課題になっています。これまでに蓄積してきた知見に基づいてタンパク質のカルボキシル基やアミノ基を標的にした簡便で応用性の高い新しい化学修飾法の開発を行っています。薬物の作用する標的タンパクの探索やタンパク質の構造解析に役立つ新しい技術を目指しています。