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これまでの成果

ワクシニアウイルスをベクターとするマラリアワクチン、新型コロナワクチンの開発

ワクシニアウイルスはワクチンとして世界的に投与され、天然痘の撲滅に貢献した実績のあるDNAウイルスです。遺伝子導入ツールとしても有用で、長い配列のDNAをウイルスゲノムに組み込むことができます。マラリア原虫や新型コロナウイルスのDNAを組み込むことで、それぞれマラリア、新型コロナのワクチンを作りました。これらのワクチンをマウスに投与したところ、十分な量の抗体が作られるとともに細胞性免疫も誘導されました。前述のとおりワクシニアウイルスはワクチンとして使われた実績があるため、臨床試験を進めやすいメリットがあります。

アデノ随伴ウイルスをベクターとするマラリアワクチンの開発

アデノ随伴ウイルス(AAV)は、遺伝子治療の使用実績がある遺伝子導入ツールです。特定の組織に外来遺伝子を長期間にわたって発現させられるため、効果が長続きするワクチンのベクターとして期待されます。ワクシニアウイルス(VV)とAAVをベクターとしてマラリアのワクチンを開発し、この順でマウスに投与したところ、伝播阻止の効果が8ヶ月以上にわたって持続することが分かりました。本成果を足がかりとして、臨床への応用を実現したいと考えています。

バキュロウイルスをベクターとするマラリアワクチンの開発

バキュロウイルス(昆虫ウイルス)は哺乳細胞に高い感染性を示すものの増殖しないため、安全性の高い遺伝子導入ツールとして知られています。バキュロウイルス用と哺乳細胞用のプロモーターを連結させることで、サブユニットワクチンとDNAワクチンの特長をあわせもつハイブリッド型ワクチンを作ることができます。実際にマラリアの感染防御ワクチンを開発してマウスに投与したところ、マラリア原虫に対して高い感染防御を示しました。また、伝播阻止ワクチンを開発してマウスに投与したところ、マウスから蚊へのマラリア原虫の伝播を阻止することができました。このような高い効果の一因として、バキュロウイルス特有の免疫賦活化効果を見いだしました。感染防御ワクチンと伝播阻止ワクチンを組み合わせることで、個人と集団の両方を守ることが期待されます。

蚊の唾液タンパク質を用いた抗血小板薬の創薬研究

蚊の唾液には、抗血小板凝固因子や血管拡張因子が含まれることが知られています。私たちはハマダラカの唾液から、コラーゲン刺激性の血小板凝集を強力に抑制するタンパク質AAPP(anopheline anti-platelet protein)を発見しました。AAPPは、今までに知られている天然物の中で最も強い血小板凝集阻害活性を示すだけでなく、既存の抗血小板薬の副作用である出血助長がありません。本成果が、血栓症の予防や治療にいかされることが期待されます。