研究紹介

　花粉症、アトピー性皮膚炎、食物アレルギーを始めとした様々なアレルギー疾患は、日本のみならず世界的にもその患者数は増加の一途をたどっています。アレルギー疾患の多くは、アレルゲン(花粉、食品、環境物質など)が、アレルゲン特異的IgEを介してアレルギー細胞（マスト細胞・好塩基球）を活性化し、ヒスタミンなどの炎症性メディエータが細胞から放出されることによって引き起こされます（図１）。これらアレルギー疾患の病態は、内的因子（ストレス状態、年齢など）や外的因子（花粉量、環境汚染物質など）によって多様に変化すると考えられています。このように複雑なアレルギー疾患の原因を追究するため、「アレルギー細胞（マスト細胞）活性化メカニズムの研究」「アレルギー疾患制御因子の研究」「環境汚染物質の環境動態や生体への曝露評価に関する研究」を通してアレルギー疾患の原因やその発症メカニズムを明らかにしようと考えています。

主要研究テーマと研究内容

１）アレルギー疾患に関わる分子・細胞生物学的研究

　マスト細胞の細胞内には様々な炎症性メディエータ（ヒスタミンなど）を含む分泌顆粒を数多く持っています。 マスト細胞膜上にはIgE受容体（FcεRI）が発現しており、アレルゲン特異的IgEが結合しています。アレルゲン（花粉など）によってIgE-IgE受容体複合体が活性化されると、アレルゲンの特性に依存した適切な細胞内でのシグナル伝達が起こり、その結果、マスト細胞内に存在する分泌顆粒から様々な炎症性メディエータが放出や他の免疫細胞との相互作用を経て、アレルギー疾患が発症します（図２）。
　当研究室では、これら一連のアレルギー応答、特にアレルゲンによるIgE受容体の活性化機構、細胞内シグナル伝達、分泌反応メカニズム、他の細胞との相互作用など様々な視点からアレルギー疾患の実体を明らかにしようとしてしています。
【１】アレルゲンの物理的特性が制御するIgE受容体シグナルエディティングの分子機構解析
【２】炎症性メディエータの開口放出メカニズムに関する研究
【３】マスト細胞と免疫細胞の相互作用によるアレルギー応答制御機構の解析

２）アレルギー疾患を制御する内的・外的因子の探索

　アレルギー疾患の病態・病状は様々な要因によって多様に変化すると考えられています。その原因としては、様々な内的因子（精神的ストレス、ホルモンバランス、代謝変化など）や外的因子（花粉飛散量、環境汚染物質、新規化学物質など）が複合的・協調的に作用してアレルギー疾患症状を制御しています（図３）。
　当研究室では、これら様々なアレルギー疾患を制御する内的・外的因子について研究を行っています。
【１】アレルギー疾患およびマスト細胞の活性化を調節する内的因子の機能解析
【２】外的因子によるアレルギー疾患発症・増悪機構の機能解析

３）臨床応用を目指したアレルギー反応制御機構の研究

　アレルギー疾患は複雑で多様な疾患症状を示すため、これまで対処療法が中心でした。また根治療法として期待されている免疫脱感作療法の分子基盤についても不明な点が多いのが現状です。
当研究室では、安心・安全な脱感作療法や新規創薬シーズ探索などアレルギー治療に向けた分子基盤の解明とその応研究を行っています。
【１】安心・安全な脱感作療法に向けた分子基盤の解明とその応用
【２】新規創薬シーズ探索と機能解明