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Molecular Pharmacognosy

研究概要Research Projects

1. 探索:熱帯林植物等から新規生理活性物質の単離・抽出、構造決定
Isolation and identification of bioactive natural products from rain forest plants

自然が生み出す有機化合物、すなわち天然物から”医薬品”は誕生しました。
現在でも、実際に用いられている医薬品の約半数は天然物あるいは天然物由来の化合物です。特に消滅の危機に曝されている熱帯林産植物には、医薬品候補となる道の天然物が数多く存在すると言われています。当研究室では、熱帯林産植物に焦点を当て、新規生理活性天然物を見つける研究を行っています。こうして探索チームが見つけた未来の”医薬品の種”は、創薬チームによって”医薬品候補”へ導かれます。本研究は、主にアメリカ国立がん研究センター(National Cancer Institute: NIH)と共同で行われています。


2. 創薬:生理活性天然物を基盤とした臨床薬候補の開発研究(抗がん、抗ウイルス薬等)
Discovery and development of drug seeds based on natural products
~Design, synthesis, structure activity relationship and mechanism of action study~

1)小分子生理活性天然物の効率良い全合成の開発
2)新規医薬品リード化合物のデザイン、合成ならびに構造活性相関研究
3)リードとなる新規生理活性誘導体の活性標的タンパク質の特定と生理機構解明に向けての基礎研究
4)生理活性誘導体の有効性の検証と臨床薬、検査薬等への応用


自然界に生きる動植物や微生物、昆虫たちは、その母体が特有に持っている酵素の働きにより、多種多様な構造を持つ天然物を効率的にその体内で創り出します。そして創り出された天然物は、私達人間にとって多種多様な作用(生理活性)を示すことがあります。創薬チームでは、天然物が持つあらゆる可能性を見つけその効用を最大限に引き出し、医薬品など我々の生活を豊かにしてくれる物を生み出すことを大きな研究課題としています。その中の一つに、抗がん、抗ウイルスの臨床候補薬の開発があります。自然界には薬理活性化合物が数多く存在しますが、残念ながらそのほとんどが臨床薬としては万能ではなく、通常は副作用や生体内での吸収、安全性、有効性等に重大な問題を抱えています。それらの問題を克服するためには、その化合物に人工的に手を加える(化学修飾)必要があります。また、天然から必要量の薬理活性物質を取り出すためには、大量の天然資源が要求されます。薬理活性天然物の有効な全合成法の確立は自然環境保護の面からも必須であり、またその後の化学的修飾の際の大きな手助けとなります。化学修飾は、活性に必要な部分構造を探る構造活性相関研究や標的タンパク質同定にも貢献します。当研究室では天然物を基盤に抗がんおよび抗ウイルス薬等の開発を主に置いて、生物学的要素と有機化学とうまくコラボレーションさせた研究を行っています。「天然物」の可能性をあらゆる方向から模索していき、予防、病気進行の停滞、治療を目指した有力な臨床候補薬を発見し、薬の開発の一端を担う研究に取り組んでいます。

研究は、日本国内や米国(ノースカロライナ大学、デューク大学、国立がん研究センター等)ならびに国立台湾大学の先生方と共同で行っています。


3. 生薬
Quality evaluation of herbal medicines by DNA analysis, chemincal constituents and activity

【生薬の品質】天然に由来する薬のうち、そのまま、あるいは簡単な加工を施したものを「生薬」と言います。生薬は産地や生育環境など、品質を変動させる多くの要因を抱えています。品質は薬効に直接影響を及ぼすことからその管理は非常に重要です。

【国産生薬】生薬の重要な用途は漢方薬や漢方製剤ですが、日本で使用される生薬のほとんどは中国からの輸入品です。最近、国産生薬の自給率を高めるための取り組みがなされており、少しずつ使用されるようになってきました。このことは漢方医療において国産生薬という新たな「薬」が導入されつつあることを意味し、現在、中国産との品質の違いを把握することが重要になってきました。

【身土不二*】私たちのグループでは「身土不二」をキーワードに研究を進めています。第一に、漢方生薬については金沢大学発の生薬を作り出す研究を行っています。中国産に依存してきた漢方生薬には日本で生産技術が確立していないものがあります。私たちは植物種から栽培、加工まで一貫した生産管理を品質評価と合わせて技術開発しています。第二に、アーユルヴェーダなどアジア伝統医学で使用される生薬製剤の研究です。日本の気候、日本人の体質に合わせた国産品の開発を目指しています。
*)その土地に住む人はその土地で採れるものが健康にとって最良であるという考え方

(1)国産生薬の開発:
 薬学系附属薬用植物園を活用した栽培研究、石川県産の野生資源の有効利用を通じて国産生薬の開発を行っています。薬用植物園 http://www.p.kanazawa-u.ac.jp/~yakusou
(2)品質評価研究
 薬学系附属薬用植物園で生産された生薬について、その品質を評価する手法を研究しています。DNA配列の解析や顕微試験、成分検索を通じた評価法を検討しています。
(3)アーユルヴェーダ製剤の国産化
 インド、スリランカにはクシャーラ・スートラという痔瘻治療に非常に有効な薬線があります。前任の御影教授(現名誉教授)が国産品「金沢糸1号」を開発し、国内でも高い治療実績を挙げています。現在は治療効果を高めるべく改良を行っています。



分子生薬学研究室

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石川県金沢市角間町