Matsuo & Yoshimura Group (Kanazawa Univ.)
金沢大院薬 機能性分子合成学 (松尾・吉村研究室)
研究内容
- 創薬を志向する多成分連結反応の合成研究
- 現在、短工程かつ多様な誘導体が合成可能な多成分連結反応を用いて、抗がん剤、抗生物質およびプロスタグランジン生合成阻害薬として期待される化合物の合成研究を行っています。多成分連結反応は、簡単な原料の組み合わせによって多様な生成物を得ることができるため、特に創薬研究において重要な反応となります。触媒的かつ汎用性の高い多成分連結反応も現在開発しています。
- 新しい有機合成反応の開発
- 炭素ー炭素結合の切断と再結合による新しい有機合成反応の開発
- 有機化学が扱う化学結合の中で、炭素ー炭素結合は強い結合エネルギーを有しており、その結合を切断して新たな結合を形成する反応の開発は発展途上の分野です。新たな合成手法の開発は、合成標的分子合成の合成工程短縮化などの抜本的な革新に繋がる重要な研究対象です。我々はβーアルコキシシクロアルカノンの開裂に続く生成した二極性活性種の形式的付加環化反応の開発およびシクロヘプタトリエン誘導体の酸化的芳香化を中心に研究しています。
- 従来の有機合成反応は、カルボカチオンまたはカルボアニオンなど、一つの極性をもつ活性種を利用して開発されてきました。我々は、同一分子内にカルボカチオンとカルボアニオンを有する反応活性種を利用することによって、従来困難であった環構築を可能とする手法の開発を行っています。具体的には、ルイス酸を用いて3-アルコキシシクロブタノンを活性化することによって生じる活性種1を用いることによって、炭素―酸素、炭素―窒素、炭素―炭素多重結合との形式的な[4+2]型の付加環化反応が進行することを見出しました。2つの極性の相乗効果によって、従来のDiels-Alder反応では実現困難であった有機反応を可能とし、薬によくみられる六員環構造を含む様々な環状化合物の有効な合成法を研究しています。
- 天然物全合成研究
- 自然界に存在する多くの資源から将来薬に繋がる有用な生理活性を持つ有機化合物が多数単離されています。しかしこれらの化合物はごく微量であることが多く,安定に供給することが創薬研究では重要な課題の一つです。私たちは,この様な天然物の中で複雑な骨格と興味深い生理活性を持つ天然物(下図の化合物群)に着目し,それらの不斉全合成研究及び全合成に必要な新規反応の開発に取り組んでいます。