Matsuo & Yoshimura Group (Kanazawa Univ.)
金沢大院薬 機能性分子合成学 (松尾・吉村研究室)
金沢大院薬 機能性分子合成学 (松尾・吉村研究室)
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- 2023
- Asymmetric Cycloaddition Reactions of Aryne Intermediates with a Chiral Carbon-Carbon axis: Syntheses of Axially Chiral Biary Compounds
- Tomoyuki Yoshimura, Ken-ichi Onda, and Jun-ichi Matsuo
- Org. Chem. 2023, 25, 8952-8956.
- DOI: 10.1021/acs.orglett.3c03983
- 本反応では、予め軸不斉が決まった出発原料からベンザイン中間体を発生させて、種々の光学活性ビアリール化合物を合成しました。このベンザイン中間体は、時間と共に光学純度が低下するという性質を持ちますが、この光学純度の低下より速く反応が進行することで、高い光学純度を維持したビアリール類合成が可能でした。この反応を用いることで、金属触媒のリガンドや医薬品への応用が期待されるユニークなビス(へテロアリール)類の短工程合成も可能となりました。
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- Synthesis of 13-16-membered cyclotetrapeptide mimics by Ugi reactions with diacids and diisonitriles
- Yurika Fuse, Sou Ookubo, Tomoyuki Yoshimura, and Jun-ichi Matsuo
- Eur. J. Org. Chem. in press
- DOI:10.1002/ejoc.202300939
- 環状ペプチドは医薬品として注目を集めていますが、その効率的な合成は多くの合成ステップを要します。我々は、環状ペプチド類似体として13-16員環テトラアミドをダブルUgi反応を用いて1段階で合成する手法を開発し、その化合物の特性を明らかにしました。
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- Aldol/Brook/Carbon Skeletal Rearrangement Casade Reactions of ß-Silyl Ketones with Aldehydes
- Aya Nowaki, Mizuki Kawano, Fuka Hori, Yurika Fuse, Tomoyuki Yoshimura, Jun-ichi Matsuo
- Eur. J. Org. Chem. 2023, e202300351
- DOI:10.1002/ejoc.202300351.
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- βーシリルケトンを用いるアルデヒドとの反応はaldol/Brook転位が進行して、骨格転位を伴ってβ,γー不飽和ケトンが得られるという新しい炭素ー炭素結合形成反応を開発した。また、その反応機構を解明し、Brook転位は炭素上において立体反転を伴って進行していることを明らかにした。βーシリルケトンは対応する不飽和ケトンから容易に調整できるため、今後様々な応用が期待される。
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- 2022
- Construction of Indole Skeletons through Direct Catalytic Three-Component Domino Reactions of Vinylarenes, Aldehydes, and Pronucleophiles
- Fuka Hori, Tomoyuki Yoshimura, Jun-ichi Matsuo*
- Synlett, e-First
- DOI:doi.org/10.1055/a-1865-2556
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- Cascade cyclization of 1,2,7,8-tetraones and total synthesis of (±)-nesteretal A
- Tomoka Dentani, Ayano Kawachi, Misaki Kato, Tomoyuki Yoshimura, Jun-ich Matsuo*
- Org. Chem. Front. 2022, 9, 3786-3793.
- DOI:doi.org/10.1039/D2QO00740A
- 2021
- Intermolecular domino Michael/aldol reactions of α,β-unsaturated esters, aromatic aldehydes, and various nucleophiles promoted with a catalytic amount of guanidine base in DMSO
- Shunya Morita, Tomoyuki Yoshimura, and Jun-ichi Matsuo*
- Tetrahedron 2021, 94, 132329.
- DOI:doi.org/10.1016/j.tetlet.2021.132329
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- Concise synthesis of cycloheptatrienes from aldehydes and the Wittig reagent prepared from pyruvic ester
- Tomoyuki Yoshimura, Kanta Chino, Jun-ichi Matsuo
- Tetrahedron Lett. 2021, 73, 153150
- DOI:https://doi.org/10.1016/j.tetlet.2021.153153
- シクロヘプタトリエン (CHT) は、生理活性天然物や医薬品、液晶などの機能性材料に含まれる構造の1つであり、多くの合成例が報告されています。過去の合成法では、反応条件が過激であったり、高価な遷移金属触媒を用いる必要がありました。今回我々が開発した方法では、ピルビン酸エステルから合成した Wittig 試薬と 4-ペンテナール誘導体を 130 ℃という比較的温和な条件で反応させることで、CHT 誘導体を合成できることを見出しました。類似の反応はなく、この手法は CHT 骨格を持つ新しい機能性分子の創生に繋がると期待されます。新しい 7 員環構築法としてだけでなく、その反応機構の解明も興味ある点です。
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- Catalytic intermolecular aldol reactions of transient amide enolates in domino Michael/aldol reactions of nitroalkanes, acrylamides, and aldehydes
- Shunya Morita, Tomoyuki Yoshimura and Jun-ichi Matsuo*
- Green Chem. 2021, 23, 1160-1164.
- DOI:https://doi.org/10.1039/D0GC04111D
- 本研究では、ニトロアルカン、アクリルアミド、アルデヒドとの 3 成分連結反応が KOH という汎用される塩基が触媒量存在するだけで効率的に進行することを見出しました。反応機構の解析より、反応系中に一時的に生じるアミドエノラートの分子間アルドール反応が比較的酸性度の高いニトロアルカン共存下で進行している点が興味深い点です。生成物が医薬品の原料となるだけでなく、この一時的に生じるエノラートの化学に今後興味が持たれます。
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- Bronsted acid-catalyzed cyclopropanation of indoles using α-aryl-α-diazoacetates
- Kenta Sakamoto, Yuya Ikawa, Tomoyuki Yoshimura and Jun-ichi Matsuo*
- Eur. J. Org. Chem. 2021, 850-853.
- DOI:https://doi.org/10.1002/ejoc.202001531
- ジアゾエステルを用いるシクロプロパン化反応は、通常、高価な遷移金属であるロジウム等を触媒として行われますが、我々は初めて有機酸の一種であるHNTf2を触媒として用いるシクロプロパン化反応を開発しました。また、フェニル酢酸エステルが共触媒として働くことも見出しました。有機触媒によるジアゾエステル活性化の可能性を広げる新たな知見を得ました。合成されるシクロプロパン化されたインドール化合物は、生理活性物質中にしばしば見られる骨格であり、医薬品合成への応用が期待されます。
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- Alkoxide-catalyzed ring expansion of 1,3-cyclobutanediones with aldehydes
- Mizuki Yamazaki, Tomoyuki Yoshimura, and Jun-ichi Matsuo*
- Tetrahedron Lett. 2021, 64, 151804.
- DOI:doi.org/10.1016/j.tetlet.2020.151804
- 1,3-シクロブタンジオンとアルデヒドとの形式的[4+2]付加環化反応が、触媒量の塩基性求核触媒を用いることによって効率的に進行することを初めて見出しました。retro-Claisen/Aldol/分子内アシル化が触媒的に進行します。環状6員環β‐ケトエステルの新しい合成法であるとともに、1,3-シクロブタンジオンの新しい合成価値を見出しました。
- 2020
- Development of Nitrolactonization Mediated by Iron(III) Nitrate Nonahydrate
- Tomoyuki Yoshimura, Yuki Umeda, Risako Takahashi, Jun-ichi Matsuo
- Chem. Pharm. Bull. 2020, 68, 1220-1225.
- DOI: https://doi.org/10.1248/cpb.c20-00645
- 二酸化窒素は酸化剤やニトロ化剤として有機合成で利用されています。しかし、非常に反応性が高いため、基質一般性に乏しいという欠点がありました。本研究では、この高活性反応種の二酸化窒素を、硝酸鉄の熱分解によって系中で徐々に発生させることで、オレフィンへの位置選択的ニトロ化と続く分子内ラクトン化へ活用できることを見い出しました。得られるニトロラクトンは、四置換含有アミノアルコールやアミノ酸への誘導化や天然物合成への活用が期待されます。
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- Chemoselective arylation of dialkyl diselenides and its application to synthesis of a N,N,N-trimethyllysine derivative
- Ryuhei Takahashi, Kenta Sakamoto, Naoki Umezawa, Takashi Umehara, and Jun-ichi Matsuo*
- Eur. J. Org. Chem. 2020, 6649-6652.
- DOI:doi.org/10.1002/ejoc.202001208
- アミン、チオール、カルボン酸といったタンパク質に存在する反応性の高い官能基の存在下、ジセレニドを化学選択的にアリール化する手法を開発しました。さらに、酸化によって対応するアルケンが効率的に生成します。これらの手法とアルケンメタセシス、還元を組み合わせることによって、セレノホモシステインよりトリメチルリジンを含む多様なアミノ酸残基へと温和な条件で変換することができます。今後、タンパク質の化学選択的翻訳後修飾に応用されることが期待されます。理化学研究所、名古屋市立大学との共同研究です。
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- Asymmetric Synthesis of a Bicyclo[4.3.0]nonene Derivative bearing a Quaternary Carbon Stereocenter: Desymmetrization of sigma-Symmetrical Diketones through the Intramolecular Addition of Alkenyl Anion
- Tomoyuki Yoshimura, Yuki Enami, Jun-ichi Matsuo
- Synthesis, 2020, 52, 3667-3674.
- DOI: 10/1.055/s-0040-1706421
- キラルリガンド存在下,アルケニルアニオンの分子内求核付加反応による非対称化で,四置換炭素含有ビシクロ[4.3.0]ノネン誘導体を 81% 収率,39% ee で合成しました。得られる二環式化合物は,生理活性天然物などの不斉合成素子として有用です。
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- Bridged-selective intramolecular Diels-Alder reactions in the synthesis of bicyclo[2.2.2]octanes
- Mika Hanashima, Toshiki Matsumura, Yuta Asaji, Tomoyuki Yoshimura, and Jun-ichi Matsuo*
- Chem. Pharm. Bull. 2020, 68, 1201-1209.
- DOI:https://doi.org/10.1248/cpb.c20-00590
- 分子内Diels-Alder反応は、比較的単純な原料から一挙に複雑な骨格を合成できる強力な合成手法です。しかし、その位置選択性は、fused体を与える場合が圧倒的に多いことが知られています。我々は、珍しいbridged体を選択的に与える要因を見出し、計算化学を用いてその理由を解明しました。bicyclo[2.2.2]octane骨格に8員環が架橋している複雑な骨格が、簡単な原料から一度に合成されます。今後、複雑な骨格を有する医薬品の合成に応用が期待されます。
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- Two-carbon ring-enlargement of cyclic 1,3-diketones to cyclic 1,5-diketones
- Shumpei Kanaya, Yuta Asaji, Tomoyuki Yoshimura, Jun-ichi Matsuo*
- Synlett 2020, 31, 1201-1204.
- DOI: 10.1055/s-0040-1707862
- 入手容易な5,6員環化合物から合成の困難な7,8員環化合物への環拡大反応を開発しました。vinylMgBr, CeCl3, t-BuOKといった汎用試薬を用いて行える点が利点です。retro-Aldol/7-or
8-endo-trig-Michael環化が一挙に進行します。7,8員環を含む生理活性物質合成への応用が期待されます。 -
- Orientation order of nonelectrically poled FTC-type chromophores in PMMA on SiO2 surfaces
- Atsushi Sugita,* Miwa Tsuruoka, Yuta Kinoshita, Yushi Futagami, Tomoyuki Yoshimura, Jun-ichi Matsuo
- Bull. Chem. Soc. Jpn. 2020, 93, 119-126.
- DOI: doi.org/10.1246/bcsj.20190257
- 我々の研究グループがが合成したドナー・アクセプター構造を有する有機分子の非線形光学現象等を調べた結果、ガラス表面上のその分子の配列が明らかになりました。さらに効果的な非線形光学分子の開発に必要な知見を得ました。静岡大学杉田博士との共同研究成果です。
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- Lewis acid-catalyzed formal [4+4] cycloaddition of cyclobutanones with silyloxydienes
- Yuna Nishi, Akira Saito, Shunpei Kanaya, Tomoyuki Yoshimura, Jun-ichi Matsuo*
- Tetrahedron Lett. 2020, 61, 151387.
- DOI: 10.1016/j.tetlet.2019.151387
- 3-エトキシシクロブタノンとジエンとの形式的な[4+4]付加環化反応によって、通常合成が困難な炭素で構成される8員環構造を一段階で構築する手法を初めて見出しました。当研究室では3-エトキシシクロブタノンを合成素子とする[4+2]型の付加環化反応の開発研究を長年行っておりますが、これは[4+4]型の反応を実現した初めての例となります。[4+4]型付加環化反応自体あまり例のない反応ですので、本反応はその意味でも重要な例となります。
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- Intramolecular Buchner reaction and oxidative aromatization with SeO2 or O2
- Shunya Morita, Tomoyuki Yoshimura, and Jun-ichi Matsuo*
- Chem. Pharm. Bull. 2019, 67, 729-732.
- https://doi.org/10.1248/cpb.c19-00243
- Buchner反応と酸化を組み合わせることによって、ベンゼン環を構成する炭素原子を入れ替えることのできる反応を見出しました。元素の入れ替えは、最新有機化学でも極めて困難な変換です。今後、同位体元素の導入等や、芳香環を有する天然物・生理活性物質等の置換基の位置を変える変換法として応用されることが期待されます。また、温和な条件下で進行する位置選択的ホルミル化としても興味深い反応です。