職員の教育活動(2009年10月現在)

共通教育科目:

・生物学1(白土、中西)

・ゲノムと細胞(中西、白土)

薬学系専門科目:

・医薬保健学基礎(中西、白土)

・分子細胞生物学1(中西)

・分子細胞生物学4(白土)

・応用細胞機能学(中西、白土、永長)

・生物の取り扱いを学ぶ1(実習科目)(中西、白土、永長)

大学院科目(自然科学研究科生命薬学専攻--修士課程):

・生物系研究者へのキャリアパス(中西、白土、永長)

・細胞機能と生体防御(中西)

・生体情報発現動態学(白土)


研究室室員への教育への私達の取り組み

2009年10月現在

 卒業研究、修士課程、博士課程のどこから私達の研究室に参加しても、生命科学の実験科学を行うための基礎的事項を習得することを目的として、基礎的な実験操作と原理、記録の取り方とまとめ方を学ぶトレーニングコース(基礎実験・基礎実験プラス)を新入室員全員が受けます。研究経験により到達目標は変わりますが、これらは単なる技術習得ではなく、論理的な考え方を身につけたり、室員共通の仕事にスムーズに参加できるようにするためにも大切であることから、希望の有無に拘らず全員が同じ事項を学びます。同様の教育システムを持つ、教育意識の高い国内外の研究者達とも情報交換しながら、内容作成しています。それぞれの学位に向けたプロジェクトは、これらを終えた後に、それぞれの学生の進路希望、適性などを含め職員間の話し合いのもとに決定されます。

 基礎実験技術・論理的な考え方・研究計画の立て方と見直し・研究実施上の課題とその克服・結果のまとめ方と考察・正確さと論理性を備えた文章の作成・口頭発表技術・コミュニケーション力の習得には、研究者や薬剤師を目指す人に限らず、将来、実験科学に関わらない職に就いたとしても、社会生活の上で大切な事項を含んでいます。


「基礎実験」: 実験科学を行うための、共通性の高い機器や手技を利用する基本的な実験を行いながら、「目的を立て、計画に沿って実施し、実験記録を取り、結果を論理的に解釈する」までの一連の考え方を学ぶことが最大の目的です。学部や修士課程での実験科学経験者には、何を今さらと感じる人がいるようですが、実際に基礎実験を始めてみると、思いのほかできないことや知らないことがあることに気づくはずです。指導は、主に職員が分担する基礎的部分(第1部)と、ティーチングのトレーニングを受けた大学院生グループが行う実践部分(第2部)に分かれます。

「基礎実験プラス」: 各自の卒業研究/修士や博士を目指す学位プロジェクトに関連する基本技術と知識を得て、各自の課題をスムーズにスタートできるようにすることが目的です。指導は、各プロジェクトの責任者である教員と、該当実験に慣れた大学院生が分担して行います。


「基礎実験」の概要

第1部:主に職員による指導と説明が行われる

<実験の基本1> 実験科学の進め方,実験計画の立て方,実験記録のとり方,実験の習いかた,実験手順と条件を室員間で共通にする意味,実験記録用紙と筆記用具の選択と使い方

<実験の基本2> 実験台/冷蔵冷凍庫/流し等の使い方,実験前の準備(実験台清掃,器具の準備,試薬の準備,機器の準備),実験後の後始末

<試薬の取扱い> 試薬の場所,試薬保管記録と整理方法と意味,吸湿性試薬,要冷蔵冷凍試薬,毒物劇物,失活しやすい試薬,要遮光試薬

<基本器具と機器の使い方> ピペット類,ガラス器具,天秤,オートスチル(実験用水の説明),製氷器(氷の取扱い),ボルテックスミキサー,ソニケーター,分光光度計,pHメーター,遠心機,恒温槽,オートクレーブ,アスピレーター(デシケーター),乾熱滅菌器

<危険を伴う実験操作> ガラス,注射針,メス,回転するもの,高温高圧,低温,バイオハザード

<基本実験> タンパク質定量,SDS-PAGE,DNAのアガロースゲル電気泳動


第2部:ティーチングアシスタントによる指導と説明が行われる

2007年度の例

タイトル: 大腸菌におけるラットSR-BIの発現と検出

概要: まず,pGEX-SR-BI-L(ラットSR-BIの細胞外領域をコードするDNA領域をGST融合タンパク質発現ベクターpGEX-KGに組み込んだもの)を保持する大腸菌BL21を作成する。次に,ベクターからの遺伝子転写を誘導するIPTGの存在下にその大腸菌を培養し,大腸菌内にGST-SRBIが出現したかどうかをウエスタンブロッティングで調べる。

実験内容と説明及び指導内容  [ 学ぶ事柄 ]:

  1)  実験計画を立て、専用記録用紙に目的、予想される実験結果と判断基準、準備、手順などを記載する   [ 実験計画立案,各項目の内容と意味を理解する ]

  2)  培地作成(LB液体培地,LB/amp寒天培地),トランスフォーメーション準備(器具と試薬)  [ 試薬秤量,無菌操作,ピペット取扱いを学ぶ ]

  3)  DNA導入/スプレッド(pGEX-SR-BI-L,pUC19,なし)  [凍結菌の取扱い,液体培地での培養,吸光度測定,遠心分離,スプレッドでの植菌の方法を学ぶ]

  4)  コロニー観察,トランスフォーメーション効率計算  [コロニーの見分け方と生育の原理・コロニーの数え方を学ぶ]

  5)  コロニーをLB液体培地で培養  [コロニー回収と植菌の方法を学ぶ]

  6)  SDS/アルカリ法によるプラスミドDNAの抽出  [遠心チューブによる遠心操作,フェノール抽出,エタノール沈殿の方法と原理を学ぶ]

  7)  制限酵素によるDNAの切断  [酵素の取り扱いを学ぶ]

  8)  アガロースゲル電気泳動,エチジウムブロミド染色,機器を用いた解析  [アガロースゲル作り,泳動,検出装置の使い方を学ぶ]

  9)  プラスミド保持菌をLB液体培地で培養(前培養)後、本培養,IPTG添加,集菌  [IPTGの働き方を理解する]

  10)  SDS-PAGE,トランスファー,CBB染色,ブロッキング  [ウェスタンブロッティングの操作方法と原理を学ぶ]

  11)  抗体との反応,化学発光法による反応と検出  [抗体取扱い,検出機器取り扱い、データ検出と解析の方法を学ぶ]

  12)  結果のまとめ,目的に沿った結果の考察を行ってから,指導者とのディスカッションを行う   [ 目的に対応した考察とは何かを理解する ]


基礎実験の指導時にティーチングアシスタントが心がける事柄(抜粋):

1)実験内容の説明

 ・原理と内容を説明してから実験操作に入る

 ・専門用語の使用をできるだけ避ける

2)実験操作の指導

 ・まず指導者がデモンストレーションを行い,次に一緒に行い,最後に独りで行えることを確認するまでの三段階を操作指導の基本とする

 ・最初はつきっきりで細かく指導する

 ・模範操作を必ず行い,各操作の意味を教える(「教わった人が別の人に手技と原理の両者を教えられる」ことが,「教えた-教わった」を意味します)

 ・手抜きや省略の方法などは決して教えない

 ・基礎的な実験操作(秤量,共通器具取扱い,機器取扱いなど将来に渡って必要な事項)には,特に正確さを要求する

 ・他人に迷惑がかかる誤り(ガス詮閉め忘れ,洗い物放置など)は,当人に始末させる

 ・注意する際は,誤りや不適切が当人にはっきりわかるように意識的に行い,口頭で直接当人に注意と説明を与える

3)ディスカッションの要点

 ・実験目的に対応した考察がなされているか

 ・結果の解釈は適切か

 ・期待しなかった結果をもたらした原因の列挙と,それを解決するための方法の提案がなされているか

 ・枝葉の原因追及や感想などを含めない


「基礎実験プラス」の内容

実験科学初心者の例

  ・大腸菌宿主ベクター系を利用し,目的タンパク質をGST融合タンパク質として大量調製する。

  ・目的遺伝子のラット週齢による発現程度変化を,初代培養細胞のRT-PCR解析により解析する。

  ・クローニング済みのcDNAを融合タンパク質として発現するための発現ベクターを構築する。

  ・マウス/ラット精巣組織切片を作成して,精細管ステージ同定を習得する。

  ・ショウジョウバエを飼育継代して,掛け合わせ及び生まれてきた第一世代の遺伝子マーカーによる判定方法を習得する。

  ・ショウジョウバエ個体を用いて薬剤投与時の生存率変化を数値化解析する。

  ・マウスへのウイルスmock感染手技と病原性解析の手順を習得する。

  ・浮遊動物株細胞及び接着性動物株細胞を継代培養し,生存率曲線と倍加時間を求める。

  ・動物株細胞を継代培養し,薬剤による分化誘導を行って食活性を測定する。

実験科学経験者の例 (修士課程より参加し、卒研時は物理化学,有機合成化学,生物工学,薬理学,細菌学などの実験経験がある)

  ・大腸菌宿主ベクター系でGST融合タンパク質を大量調製し,ウエスタンブロット解析による検出を行う。

  ・遺伝子のサブクローニングを行い,発現ベクターを構築して塩基配列を確認する。

  ・動物株細胞の継代培養を行って増殖曲線と生存率曲線を求め,細胞表層に局在するタンパク質を抗体を用いて検出する。

  ・動物組織切片を作成して,in situハイブリダイゼーションやTUNEL法により組織学的解析を行う。

博士課程以降から私達の研究室に参加した場合の例 (出身は、理学部化学科、医学部医学科など)

  ・動物株細胞を継代培養し,抗がん剤により細胞死を誘導して,細胞死の各種指標(クロマチン凝集,DNA切断,ミトコンドリア酵素活性,膜酵素機能,膜リン脂質局在)に基づき細胞死の様式を解析する。 

  ・大腸菌ベクター系でリン脂質結合タンパク質を発現させ,リン脂質への結合性を利用して精製し,機能アッセイを行う。

ショウジョウバエ実験者のための基礎実験プラス

(基礎編)

 ・概論:ショウジョウバエ実験に関する基礎知識 ・ハエの発生と生態 ・ハエ遺伝学の基本と応用 ・ハエ遺伝学の演習

 ・実習:飼育に必要な操作の習得 ・顕微鏡の使い方の基本 ・かけ合わせに必要な事項・かけ合わせ実習

(応用編)

 ・ショウジョウバエ胚および胚細胞の調製と染色技術の習得

 ・ショウジョウバエ解剖の基本操作の習得

 ・ショウジョウバエを用いた感染免疫実験に必要な基本操作の習得


by Akiko Shiratsuchi

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