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安全なくすりの創生に貢献し
安心な社会の創造を目指す
安全創薬研究グループ
金沢大学 重点戦略経費 政策課題対応型研究推進

研究概要OUTline

一分子機能マーカーの探索・創出による副作用予測

 新しい薬が世に出るまで、すなわち薬の候補化合物が見いだされてから病気治療に利用されるまでには、9年〜17年の非常に長い年月がかかります。それは、ある疾病に有効と期待される化合物のスクリーニング、ヒトに投与する前に行う動物や細胞を用いた安全性や体内動態に関する非臨床試験、これら試験にパスした候補化合物のヒトでの臨床試験、そして最終的な承認申請という、多くの段階を経て創り出されるからです。しかも、最初に見つけられた化合物のうち新薬として成功する確率は数万分の1と極めて低いのが現状です。長い年月をかけた創薬プロセスにおいては多様な問題により候補化合物がドロップアウトしていきます。これまでの研究開発の経験を生かすことにより、創薬の課題を克服して成功確率を上げる努力がなされてきましたが、現在創薬上の最大の問題は副作用・毒性の発現です。薬理作用のない化合物は開発対象になりませんし、薬効メカニズムが明確なのが現代の創薬です。それでも薬の効きめには個人差が出ますが、予期せぬ副作用・毒性の予測は極めて困難であるのが現状です。そのため開発段階で見つからない副作用・毒性が、市販後に初めて見られることがあり、投与される患者はもちろん、多大な資源を投資した製薬企業にも大きな損害となります。即ち、創薬段階でいかに副作用・毒性を予測し、開発中あるいは市販後の副作用・毒性を回避するかが求められています。一方、抗がん治療に伴い必発する副作用など「回避できない副作用」も実際にはあります。副作用は、患者の生活の質(QOL)を低下させるだけでなく、骨髄抑制や吐き気、痛みなどの副作用による治療の中断は、患者の生命予後(治療後の生存率など)に直結することもあります。したがって、避けられない副作用に患者一人一人が立ち向かい、乗り越えてゆくことを後押しするめに、副作用発現の前兆や予測因子を明らかにし、適切な補助療法や薬剤の減量基準を確立してゆく必要があります。すなわち、創薬研究における副作用発現機構解明は、臨床現場での適切な薬物療法の確立のためにも重要な研究と位置付けられます。
 したがって、本研究プロジェクトでは安全性に優れた創薬と薬物療法の最適化を推進するために、副作用・毒性発現メカニズムの詳細の解明、発現メカニズムに基づいたバイオマーカーと評価法の樹立、それらのツールの医薬品開発段階への応用を目指した研究を展開しています。
 副作用・毒性といっても多様ですが、医薬品投与により急性に生じる場合と慢性投与により問題となるもの、重篤なものとQOLを悪化するようなもの、極めて希な場合と頻度の高いものなどがあります。副作用・毒性発現には薬が作用する生体因子とその周辺での薬の濃度が影響します。また、直接作用を示すものが、投与された薬ではなく、その代謝物の場合もあります。すなわち、副作用・毒性の理解のためには、薬の悪影響が直接およぼされる生体側因子と体内動態の情報を組み合わせて考えることが求められます。したがって本研究推進においては、薬物代謝、体内動態のメカニズムや組織移行解析、病態特性、化合物合成など多様な情報を集積した学際的研究が必要であり、それぞれに専門性を有する6名の学内教員を中心とし、学外の大学や製薬企業などとの研究機関との共同研究で推進しています。現在、具体的には、(1)反応性代謝物の検出法、(2)薬物性肝障害の予測、(3)尿酸値変動と生体への影響、(4)薬の吸収・肝動態・腎排泄と内因性・外来性因子との相互作用、(5)病態の放射性画像診断とがんの内用放射線治療、(6)薬の体内動態制御法、(7)分子イメージング剤の創出、(8)病態時の体内動態変動や副作用発現、(9)皮膚科外用剤の体内動態機構、(10)食物由来成分の機能などの研究をグループ内で実施しています。これら研究成果によって、多様であるで副作用・毒性発現機構を一つでも多く明らかにし、その情報を基に予測性の高い評価法の樹立を行うことにより、安全な医薬品創出に貢献することをめざしています。


安全創薬事務局

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