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報道ダイジェスト:記事

つなごう医療(333)中部の最前線「骨粗しょう症早期受診を」

薬局の店頭で簡単な検査を受けることで、高齢者の骨粗しょう症予防につなげようと、金沢大と金沢市薬剤師会、石川県臨床整形外科医会が、医薬連携の取り組みを全国に先駆けて始めている。高齢女性に多い骨粗しょう症は、自覚症状が乏しいまま転倒骨折や寝たきりにもつながるため、患者自身の気づきと治療意欲を引き出そうとする試みだ。(編集委員・安藤明夫)

金沢市の中心街にある薬局。客の女性(74)が電卓のような計算機を、店主の綿谷敏彦さん(45)に教わりながら操作していた。

これは、世界保健機関(WHO)が開発した「FRAX(フラックス)」という骨粗しょう症の状態を推計する機器。年齢、性別、体重、身長、骨折経験の有無、喫煙・飲酒の習慣など12の質問に答えることで、今後10年間に骨折する確率を割り出す。この女性の測定結果は、70代としては決して高い方ではないが、精密検査を受けて骨密度を調べた方がいいという数値だった。

「痩せ形だと、数値が高く出ます。骨折の経験があれば、50%以上になる」と、金沢大薬学系の荒井国三教授(61)。

骨粗しょう症の診断には、医療機関で骨密度を測定する精密検査が必要だが、自覚症状がないため、整形外科を受診して検査を受ける患者はごくわずか。そこで、まちなかの薬局にFRAXを置き、中高年の女性客に試してもらい早めの受診・投薬治療につなげるというのが、この取り組みの狙いだ。

金沢市では、1996年に女性を対象に骨粗しょう症検診を始め、2010年にFRAXを導入。金沢大整形外科の山本憲男特任教授が、受診者の数値とその後の精密検査の結果を比較し、提唱したのが「五の法則」だ。数値が50代は5%、60代は10%、70代は15%を上回ると骨粗しょう症と診断される可能性が高いため「五の倍数を目安として考えよう」という呼び掛けだ。

この研究をもとに医薬連携の形を考案したのが荒井教授。「金沢市の検診率は全国平均よりはかなり高いが、それでも25%程度。薬局で測定できれば、多くの人が治療するようになり、街の健康ステーションとしての役割を高めることができると思った」と話す。

薬剤師会を通じて薬局に協力を呼び掛け、昨春に取り組みをスタート。チラシやのぼりを作ったり、市民講座を開くなどしてPRした。また、薬局で精密検査を勧められた人が受診する医療機関とも連携し、患者の骨密度の変化を調べていく研究も開始した。自覚症状がないと服薬をやめてしまう患者が多いため、医師と薬剤師が情報交換しながら働き掛けて服薬率を高めることも目的に含んでいる。服薬を続ければ、高齢期の骨折の5割を防げるという。

ただ、医薬連携に参加している薬局と整形外科は、いずれも金沢市を中心に石川県内のごく一部にとどまっている。1年間に薬局で測定した人も、117人と少ない。さらに、そのうち精密検査を受けて治療につながり、研究に参加している患者はまだ数人だ。綿谷さんは「接客に余裕があるときでないと説明できないので、限られてしまう」と語る。参加していない薬局も「忙しさ」を理由に挙げることが多いという。

荒井教授は「長寿社会の中での薬局の役割を訴え、参加を呼び掛けていきたい。また、他都市の薬剤師たちも店頭測定を始める動きがあり、他地域とも連携するなどして、息長く研究を続けていきたい」と話す。

骨粗しょう症 加齢などにより骨がもろく弱く、折れやすくなる疾患。閉経による女性ホルモンの減少で骨密度が低下するほか、他の病気の影響、薬の副作用、生活習慣が原因となる場合もある。推定患者数は1000万人以上で、その8割が女性。治療は、カルシウムの吸収や骨の形成を促す薬を使うことが多い。FRAXは、インターネット上の関連サイトでも測定できる(骨粗しょう症、FRAXで検索)。

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