薬学類・創薬科学類,大学院薬学系ホーム > 研究室・教員 > 報道ダイジェスト > 記事

報道ダイジェスト:記事

小腸栄養吸収の構造解明・タンパク質が指令 金大・辻教授グループ 治療、新薬開発に道

金大大学院自然科学研究科の辻彰教授らの研究グループは3日までに、小腸での栄養吸収に重要な役割を果たすタンパク質を突き止めた。「Rab8」と呼ばれるタンパク質が、小腸表面にある栄養の取り込み口に指令を出して糖やアミノ酸を吸収させており、実験ではRab8を作り出す遺伝子を失わせたマウスは、十分な餌を与えても栄養失調状態となった。栄養吸収のメカニズムが遺伝子レベルで解明されたことで、栄養吸収障害性の病気治療や新薬の開発に役立つと期待される。

研究は金大大学院自然科学研究科の加藤将夫准教授と久保義行助教、群馬大生体調節研究所の原田彰宏教授らのグループと共同で進められ、成果は6月28日付の英科学誌「ネイチャー」電子版に掲載された。

人の細胞の表面には「トランスポーター(運び屋)」と呼ばれるタンパク質が存在し、それぞれのトランスポーターは栄養や薬物などを吸収するのをはじめ、いったん取り込んだ異物を排出する出入り口として機能している。小腸の内壁には多数のひだがあり、その表面は無数の突起である微絨毛で覆われている。食べたものは小腸の酵素の働きで分解され、タンパク質は「ペプチド」、炭水化物は「グルコース」などに変化して絨毛にあるトランスポーターから吸収されていることが知られている。

一方、Rab8は人のほか、動物が体内に持つタンパク質だか、その働きはこれまで明らかになっていなかった。数年前、原田教授が実験用にRab8遺伝子を欠損させたマウスを作ったところ、餌を与えていたにもかかわらず、離乳期を迎えた生後20日前後ですべて死んだ。

その後、辻教授らが実験を重ねた結果、Rab8の遺伝子を失わせたマウスは、栄養吸収速度が正常マウスの3分の1以下まで低下していることが分かった。その原因について、ペプチドとグルコースを取り込むトランスポーターが機能していないことを突き止めた。

研究では、出生直後から下痢をおこし、脱水と栄養失調が続く栄養吸収性障害の「微絨毛萎縮症」の患者の体内でもRab8が極端に減少していることを確認している。辻教授は既に、薬物がペプチドのトランスポーターを経由して吸収されることを発見しており、「Rab8を調べれば医薬品の効き目に個人差がある理由も解明できる。今後は他の器官での働きも研究したい」と話している。

栄養吸収障害性の疾患

食べた物の栄養が体内で消化吸収されず、治りにくいとされる先天性のものにはヒルシュプルング病などがある。根本的な治療は小腸移植しかないとされる。栄養吸収が低下し続けると体重増加や成長が阻害される上、低栄養のために免疫力が低下して重い感染症かかりやすくなる。

お問い合わせ先: 辻 彰;tsuji@kenroku.kanazawa-u.ac.jp

↑ ページトップへ