薬学類・創薬科学類,大学院薬学系ホーム > 研究室・教員 > 報道ダイジェスト > 記事

報道ダイジェスト:記事

ニコチン依存症治療に光 「ドパーミン」活性タンパク質 山田教授(金大)らが解明

喫煙でニコチンを摂取した際などに脳内の神経細胞から分泌され快感をもたらす「ドパーミン」を活性化させる二つのタンパク質を、金沢大の山田清文教授(四七)=神経精神薬理学=のグループが解明した。これらのタンパク質の働きを制御できれば、たばこ依存症や薬物依存症だけでなく、ドパーミンの量と深くかかわるとされる統合失調症やパーキンソン病の治療に道を開くと期待される。(報道部・高橋雅人)
 山田教授らは二〇〇一年からドパーミンの分泌を促す物質を探り、モルヒネ依存症に「組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)」というタンパク質が働いていることを〇四年に特定した。

精神神経疾患にも有効か

今回tPAの働きを調べた結果、tPAが働いてできる酵素「プラスミン」がドパーミン神経細胞の先に位置するタンパク質「PAR-1」と結合してドパーミンの分泌を活性化させることが分かった。血液中でtPAは血栓を溶かし、PAR-1は血液を凝固させる働きがあることが知られていたが、脳内ではどのように働くかは未解明だった。
 山田教授らは恍惚(こうこつ)状態になると特定の部屋に入るように学習させたマウスを使って実験。遺伝子操作で生み出したtPAのないマウス、PAR-1のないマウス、正常なマウスにそれぞれニコチンを注入して比較した。その結果、tPAやPAR-1のないマウスはともに「恍惚の部屋」に入る時間が正常のマウスの三分の一以下だった。
 山田教授は「tPA、プラスミン、PAR-1のどれかをコントロールすれば依存症や精神神経疾患の治療法にもつながる。血中でこれらのタンパク質の働きを促したり抑えたりする薬は既にあり、脳内でも作用する薬の開発に取り組みたい」と意欲を見せている。研究成果は米神経科学会の雑誌で発表した。

関与解明は画期的

神経疾患の病態生理学研究に詳しい名古屋大医学系研究科の尾崎紀夫教授(精神医学)の話
 ニコチンとドパーミンをつなぐ仕組みは不明で今回の研究はPAR-1の関与を明らかにした点で画期的だ。精神疾患をもつ患者は喫煙率が高く、平均寿命の低さにつながっているなどと報告されており、PAR-1と精神疾患との関係性にも着目すべきだ。今後、臨床的治療法の開発に向けた研究が待たれる。

ドパーミン

:脳や脊髄(せきずい)など中枢神経系に存在する神経伝達物質。運動調節、ホルモン調節、快感、意欲、学習などに関係する。減少すると小刻み歩行、加速歩行などの歩行異常、前傾姿勢、表情が乏しくなるなどパーキンソン病の原因になる。過剰に分泌されると幻覚、妄想など統合失調症を引き起こすとされる。

↑ ページトップへ