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PTSD心的外傷後ストレス障害 脳「壊す」 ストレスで神経新生せず 金大・米田教授 世界初、仕組み解明

恐怖体験で起こる心の病「心的外傷後ストレス障害」(PTSD)で、ストレスを受けてから5日後に突然、脳内の神経細胞が新しく生まれなくなることを、金大大学院自然科学研究科・薬学部の米田幸雄教授(神経化学)がマウス実験で突き止めた。ストレスが「脳を壊す」ことを明らかにしたのは世界で初めて。PTSDの治療法の開発につながる成果として期待されている。

マウスで実験 5日後に突然

実験では、マウスを水槽の中でおぼれないように固定してしばらく動けなくした後で、脳内の変化を調べたところ、5日間が経過してから突然、脳内で神経細胞の新生が起きなくなり、「脳が傷んだ」状態になった。
 マウスはその後、水を見ただけでも怖がって動かなくなるなど、PTSDとみられる症状が出た。人に使われている抗うつ薬をマウスに与えると、これらの症状が改善されることも分かった。
 米田教授はこのほか、強いストレスがかかった後の脳内には、脳の活動を抑制する物質「GABA]の放出が抑制され、脳が興奮状態になることも初めて発見した。その際には、脳を活発にする物質「グルタミン酸」が増加しており、グルタミン酸が神経細胞の新生に深くかかわっていることも明らかにした。
 米田教授によると、トラウマ(心的外傷)を受けた人の中には、脳が委縮してしまうケースが知られており、その原因が神経細胞の新生が起こらなくなることにあるという見方もできるという。米田教授は「ストレスと脳の関係を解明することで、抗うつ薬の効き方が分かり、より良い薬の開発にもつながる」と話している。

トラウマ解明に光 松田敏夫・阪大大学院薬学研究科教授(薬理学)

小さいころのトラウマが凶暴化などの異常行動に結び付くことがマウスの実験で知られており、ストレスで実際に脳が傷んでいるという研究は、トラウマの解明に役立つと考えられる。今後ストレスで神経細胞の新生が止まった場合に、マウスの記憶や学習の能力が変化するかなどのデータもまとめる必要がある。
心的外傷ストレス障害(PTSD)
戦争や災害、事故など死にさらされるような極めて強烈なストレスの経験が発病の原因となる。ある出来事で心に深い傷を負ったことで、恐怖体験が突然よみがえるフラッシュバックで緊張が続き、以前の生活に戻れなくなる状態を指す。一般的に知られるようになったのは、ベトナム戦争から帰還した米兵の精神的な問題の研究による。専門医による治療もあるが、確実に治せる方法や薬はまだなく、研究が続けられている。

お問い合わせ先: 米田幸雄;yyoneda@p.kanazawa-u.ac.jp

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