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報道ダイジェスト:記事

脳神経細胞死滅メカニズム解明 アルツハイマー病治療に道 金大・田熊助教授ら世界初 特定タンパクと酵素結合で"窒息"

金沢大大学院自然科学研究科の田熊一敞(かずひろ)助教授(37)=薬理学=らのグループが、脳の神経細胞が死滅して認知症(痴呆症)となるアルツハイマー病で、これまで分からなかった死滅の仕組みを世界で初めて解明した。脳内で特定のタンパク質と酵素が結合すると、細胞にエネルギー源を供給する機能が低下し、これが神経細胞を"窒息"させていた。今後はこの結合を阻止する方法の確立が、認知症の進行を止める治療につながると期待される。(報道部・沢井秀和)
 米コロンビア大との共同研究で、米国の科学誌「サイエンス」と米国実験生物学協会誌の電子版に発表した。
 アルツハイマー病では、「アミロイドβ(Aβ)」というタンパク質が脳内にしみのように沈着し、神経細胞が死んでいくとされている。グループは、同病の患者の脳を使って調べ、神経細胞のミトコンドリアにAβと特定の酵素「Aβタンパク結合アルコール脱水素酵素」(ABAD)が共存するのを突き止めた。
 その後、脳内でAβとABADを過剰に発現させるアルツハイマー病モデルのマウスを使って実験。正常のマウスと比べ、神経細胞の死滅数が3―4倍多いことを確認した。一方、AβとABADの結合を邪魔するようにしたアルツハイマー病モデルのマウスは、死滅数は正常なマウスと同じだった。
 さらにアルツハイマー病モデルのマウスは、神経細胞にエネルギー源を供給するミトコンドリア内で、酸素や糖分を取り込んでつくるエネルギー量が、正常マウスに比べて少ないと分かった。
 この結果、アルツハイマー病の神経細胞の死滅には、AβとABADの結合と、細胞にエネルギーを供給できない状態がかかわっていることが明らかになった。田熊さんは「これまでのアルツハイマー病の治療は対症療法がほとんど。神経細胞の死滅を抑える新薬を開発できれば、進行を食い止められるだろう」と話している。

アルツハイマー病に詳しい名古屋大大学院医学系研究科の鍋島俊隆教授(神経精神薬理学)の話

世界の研究者が、脳内でアミロイドβを生成させなかったり、機能させないように研究を続けている中、一つの可能性を示した。呼吸系にかかわりが深い細胞のミトコンドリアが障害を受け、脳が機能しなくなる過程を明らかにした点が評価できる。脳内のアミロイドβと特定の酵素が特異的に結合することを抑制できれば、新治療薬になる可能性がある。

アルツハイマー病 脳の神経細胞が脱落、認知症を起こす病気。記憶や言語に関する障害のほか、被害妄想などの精神症状や、はいかいなどの問題行動も伴う場合もある。平均余命は8―10年との報告もある。

お問い合わせ先: 田熊一敞;ktakuma@p.kanazawa-u.ac.jp

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