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生体防御応答学

主な研究テーマ

生体恒常性維持機構としての自然免疫の研究

  • 貪食による変性自己細胞除去の仕組みと意義に関する研究
  • 自然免疫誘導の仕組みに関する研究
  • 微生物と宿主との相互作用に関する研究

研究の概要

【背景】

私たちの体内には、変性した自己細胞や侵入してきた病原性微生物などの“要除去細胞”が一生を通じて頻繁に現れます。これらが速やかに取り除かれることで生体恒常性が維持されており、その働きが破綻すると健康を保つことが難しくなります。

要除去細胞の排除は、おもに自然免疫(innate immunity)によって担われています。自然免疫はすべての多細胞生物に備わる生体防御機構であり、その基本的な仕組みは生物種を越えて同じであると考えられています。しかし、自然免疫反応の理解は獲得免疫(acquired immunity)に比べて遅れており、未解決の課題が多く残されています。生体防御応答学研究室では、モデル動物のキイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)を使って自然免疫の仕組みと意義の解明をめざした研究が行われています。哺乳類は自然免疫と獲得免疫の両方を持つのに対して、ショウジョウバエには自然免疫だけが備わっています。そのため、ショウジョウバエを使う研究には、獲得免疫の影響を受けることなく自然免疫の反応を調べることができるという有利さがあります。ショウジョウバエは進化系統樹上ではヒトから離れていますが、個々の遺伝子の構造と機能は両者の間で類似しており、さまざまな生命現象にも共通性のあることが知られています。さらに近年では、抗菌剤や抗がん剤などのヒト疾患の治療に使われる医薬品がショウジョウバエの疾病モデルでも効果を発揮することがわかってきました。つまり、ショウジョウバエを用いる研究で明らかされる病気の原因や薬の働きは、ヒトでも成り立つ可能性が高いのです。

体内に生じる変性自己細胞には、空間を塞ぐ細胞、古くなった細胞、組織機能を妨げる細胞、そして有害な細胞が含まれます(図1)。これらが速やかに取り除かれることで、組織が作られて更新され、組織の機能が獲得され、また病気が防がれています。変性自己細胞は、おもに貪食(どんしょく)(phagocytosis)とよばれる反応で除去されます(図2)。一方、体内に侵入した細菌などの微生物は、同様の貪食除去に加えて、宿主が生産する抗菌ペプチドやラジカルなどの抗微生物性物質により殺傷されます(図3)。さらに、これらの自然免疫反応が宿主に常在する微生物によって調節される可能性が指摘され、また要除去細胞が存在しない時にも自然免疫反応が誘導される場合があることが知られており、仕組みと意義の解明が待たれています。

【課題と取組】

変性した自己細胞はもともと体内に存在する細胞のため、正常な細胞と区別する仕掛けが必要です。その鍵となるのが生理学的細胞死のアポトーシス(apoptosis)です。変性した自己細胞にはアポトーシスが誘導され、細胞表面には私たちが“貪食目印(marker for phagocytosis)”とよぶ物質が出現します。そして、食細胞は、この目印に結合する受容体を持つことで、変性自己細胞を認識して選択的に貪食できるのです。変性自己細胞の排除がうまく行われないと、体の形作りや組織の再生に不具合が生じるだけでなく、自己免疫疾患や癌などのさまざまな病気の発症につながる可能性がうまれます。生体防御応答学研究室の主要な研究課題は、貪食目印と受容体を同定して貪食反応を誘導する情報伝達経路を明らかにするとともに、この反応の生体恒常性維持における役割を解明することです。

病原性を持つ微生物が体に侵入した時には、微生物に特有の構造が免疫の仕組みに感知されます。すると、食細胞による微生物の貪食が起こるとともに、抗微生物性物質の生産が誘導されて、危険な微生物を除去します。生体防御応答学研究室は、これらの免疫反応の誘導に関わる微生物側および宿主側の分子を見いだして働き方を明らかにすることをめざしています。また、微生物の感染を伴わない刺激で自然免疫反応が誘導されることがあり、その現象の仕組みと意義の解明が必要となっています。一方で、微生物には、貪食や抗微生物性物質の生産を抑制し、また、免疫や医薬品への耐性を獲得する働きのあることが知られています。これは微生物が宿主内で生き延びるために性質を変化させたことによると予想され、感染症を防ぐにはこのような微生物の振る舞いを理解する必要があります。さらには、すべての多細胞生物には微生物が常在しており、それらが個体にさまざまな影響を与えることがわかりつつあります。生体防御応答学研究室は、微生物と宿主の両方に遺伝学を適用した実験系を利用してこれらの課題に取組んでいます。

【目標】

自然免疫は私たちが健康に生きてゆくために不可欠の生体反応です。生体防御応答学研究室は、この重要な生命現象の仕組みと意義を解明するために、以下の目標を掲げて医療への応用を視野に入れた研究を進めています。

  • 貪食による変性自己細胞除去の仕組みと意義に関する研究
    進化的に保存されたアポトーシス細胞貪食反応の仕組みを解明し、生体恒常性維持におけるこの反応の役割を明らかにする。
  • 自然免疫誘導の仕組みに関する研究
    感染時および非感染時における自然免疫反応の誘導と実行に関わる分子を同定し、それらの働き方を明らかにする。
  • 微生物と宿主との相互作用に関する研究
    外来性および内在性の微生物と宿主との相互作用の実態とその意義を明らかにする。

最近の主な発表論文

教員紹介

  • 中西 義信 教授

    専門分野

    免疫生化学

    所属学会

    日本生化学会,日本薬学会,米国生化学分子生物学会,米国免疫学会,米国微生物学会

  • 倉石 貴透 准教授

    専門分野

    自然免疫学

    所属学会

    日本生化学会,日本分子生物学会,日本薬学会

  • 堀 亜紀 助教

    専門分野

    自然免疫学

    所属学会

    日本分子生物学会

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