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薬物動態学

主な研究テーマ

  • 薬物の消化管吸収メカニズムと薬物間相互作用
  • 薬物の肝・腎排泄メカニズム
  • 輸送体による内因性物質調節機構
  • 薬物の臓器毒性発現機構と安全創薬

研究の概要

キーワードは「輸送体(トランスポーター)」、「病態」、「薬物動態」、「安全創薬」です。

輸送体は、ATPを駆動力とする一次性のABC輸送体がおよそ50種類、それ以外のSLC輸送体が400種類以上存在し、およそ500種類の分子がヒトにおいて細胞内外の物質交換に働き、生体恒常性維持に貢献しています。既にいくつかは遺伝性疾患と関連づけられるなど重要性が明確になっています。しかし、生理的役割は不明なものが多く、輸送される基質が見つかった場合であっても、本来の基質であるか否かや生理的意義はあいまいな点が多いのが現状です。また、内因性物質に加えて薬物を認識する輸送体については、薬物による輸送体への影響が時として薬物の毒性として現れることもあります。したがって、薬物と輸送体の相互作用を明らかにすることは医薬品を安全にかつ適正に使用するために欠かせません。この様に、各輸送体分子について多様な観点からの研究展開が可能であり、生理学的・薬理学的意義の発見による創薬ターゲットやDDSへの応用など高いポテンシャルがあります。

トランスポーターの機能的特徴から、私たちは二つの観点からの研究を展開しています。

1:生理的輸送体

アミノ酸、糖のような生理的物質の細胞膜透過に働く輸送体を生理的輸送体と呼びます。これらの輸送体は基質選択性が高く、生理的に重要な働きをしています。私たちはカルニチンを基質として輸送するOCTN2(SLC22A5)を単離し、「全身性カルニチン欠乏症」の原因遺伝子として同定しました(Nature Genetics,1999)。以来、生理的に重要なステロイドホルモン抱合体、尿酸、プロスタグランジンを輸送する輸送体の研究を展開しています。これまでの研究によりステロイドホルモン抱合体に親和性が高い有機アニオン輸送体(Organic Anion Transporting Polypeptide, OATP)による乳癌や前立腺癌などの増殖に必要なステロイドホルモンの前駆体として効率良く輸送されることを明らかにしています(Biochem Pharmacol, 2012)。生体内での役割は依然不明ですが、尿酸の再吸収に腎尿細管上皮細胞に発現するURAT1(SLC22A12)およびGLUT9(SLC1A9)の連携輸送が決定的であること(Nephrol Dial Transplant, 2013)や小腸上皮細胞に発現するABC輸送体BCRPを介して腸管内へ排泄されること(PLoS ONE, 2012)を証明しました。近年では、脂質メディエータとして炎症反応や免疫に重要な役割を果すプロスタグランジンE2に親和性の高い輸送体欠損動物モデルを用い、炎症などの疾患に対する輸送体の役割を明らかにするために取組んでいます(J Endocrinol, 2013)。

2:薬物動態と輸送体

小腸をはじめとする消化管には様々な輸送体が発現しています。私たちは、消化管に発現する生理的輸送体が薬物を認識し、吸収を手助けすることに着目し、消化管組織に発現する輸送体が薬物吸収に与える影響を細胞や実験動物を用いて研究してきました。小腸上皮細胞の刷子縁膜側にOATP2B1が発現することを明らかにして以来、OATP2B1が抗アレルギー薬、高脂血症薬などの臨床上重要な薬物の消化管吸収に寄与することを報告してきました(Pharm Res, 2010; Drug Metab Pharmacokinet, 2011)。さらに、OATP2B1上での薬物-薬物間または薬物-ジュース間相互作用が薬物の消化管吸収を有意に変動させることから、OATP2B1が薬物の安全かつ適正使用において考慮されるべき重要な輸送体の1つあることを実証してきました。一方で、薬物を含む生体異物や薬物を認識するABC輸送体は薬物の吸収・分布・排泄に寄与します。我々は、主に肝細胞の胆管腔側膜に発現するABC輸送体への薬物作用により、胆汁酸の排泄が阻害されるため薬物誘導性肝障害の原因になりうることを報告しました。この副作用を感度よく定量する新しい測定法として蛍光基質を用いたQuantitative Time-Lapse Imaging (QTLI) 法を提唱し、その薬物の毒性評価に対する有用性を明らかにしました(Drug Metab Dispos, 2011; Toxicol Appl Pharmacol, 2012)。したがって、薬物の安全かつ適正な使用や個別化医療への応用など、既存の薬物動態を調節因子としての輸送体の役割を明らかにしていきます。

以上の観点から私たちは現在以下のような研究を行っています。

  1. 薬物動態に重要な輸送体の機能解析と輸送体上での薬物間相互作用に関する研究
    1. 輸送体による薬物吸収と食品成分が与える影響
    2. 輸送体上での薬物相互作用による薬物の組織移行性の変動性
    3. 薬物の排泄(腎肝振り分け)機構の解明
  2. 薬物の毒性発現に関する研究:
    1. 胆汁酸輸送体上での相互作用と薬物の肝毒性
    2. 高脂血症薬(STATIN)による横紋筋融解症発症メカニズムの探求
  3. 尿酸の生理的役割と細胞内動態調節
    1. 尿酸による血管障害メカニズムの探索
    2. 高尿酸血症とインスリン抵抗性の相関機構の解明
    3. 尿酸の消化管分泌に与える食品成分の影響
  4. 炎症を基本とする疾患におけるプロスタグランジン輸送体の役割
    1. 肺線維症大腸腺種症/大腸癌

また、トランスポーターごとに新しい研究展開が楽しめます。「トランスポーター」、「薬物」、「薬物動態」に関心のある方はどうぞオリジナルHPを訪問ください。

最近の主な発表論文

教員紹介

  • 玉井 郁巳 教授

    専門分野

    トランスポーター、薬物動態

    所属学会

    日本薬物動態学会、日本薬学会、日本痛風・核酸代謝学会、日本薬剤学会、International Society for the Study of Xenobiotics (ISSX), American Association of Pharmaceutical Scientists (AAPS), American Society of Pharmacology and Experimental Therapeutics (ASPET), American Society of Nephrology (ASN)

  • 中西 猛夫 准教授

    専門分野

    薬物動態学、生物薬剤学(トランスポーター)、分子生物学、分子腫瘍学(薬剤耐性)

    所属学会

    日本薬物動態学会、日本薬学会、日本薬剤学会、日本DDS学会、日本痛風・核酸代謝学会

  • 小森 久和 助教

    専門分野

    薬物動態学、生物薬剤学、分子生物学

    所属学会

    日本薬学会、日本薬物動態学会、日本薬剤学会 、International Society for the Study of Xenobiotics (ISSX)、American Association of Pharmaceutical Scientists (AAPS)

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