主な研究テーマ
- トランスポーター、アダプタータンパク質と薬物治療・病態との関連
- 生体膜透過機構の細胞特異性と薬物治療に及ぼす影響
- 生理学的薬物速度論に基づく薬物治療と臨床試験の最適化
研究の概要
私達の研究室では、2つの研究コンセプトを柱に、疾病に対する最適な薬物治療を目指した研究を行っています。
一つめの柱は、薬物を認識し細胞膜を通す働きをする膜タンパク質(トランスポーター)群とそれらをつなぐタンパク質(アダプター)の役割の解明です。生体は自身の生存にとって必要な化合物(栄養物)を取り込み、不要な化合物(異物や代謝物)を排除(排出)しようとします。この仕組みが解明できれば、生体が利用しやすい薬物、すなわち吸収されやすく作用部位にも到達しやすい医薬品を作ることができるはずです。私達はこのような栄養物と異物とを区別する仕組みが、トランスポーターを含むアダプターを介したタンパク質間相互作用(図1)ではないかと考えています。私達も含め多くの研究グループの努力により、栄養物と異物とを区別する仕組みとしてトランスポーターや、薬物を分解する酵素が解明されてきました(図1)。従来、これらタンパク質はそれぞれが個々に独立して機能すると想定されてきました。一方で私達は、トランスポーターが細胞膜でどのような存在様式をとっているかに興味を持ち、トランスポーターの末端に特異的に結合するアダプターとしてPDZタンパク質PDZK1を特定しました(図1)。さらに、薬物の消化管吸収に働く小腸上皮細胞において、PDZK1が薬物の取り込みに働くトランスポーターや排出に働くトランスポーターと結合することを見出しました(図1)。同様な調節因子としてRab8も報告しました(図1)。すなわち、トランスポーターや酵素は、個々がばらばらに機能しているのではなく、アダプターを介した複合体を形作っており、これが生体の持つ栄養物と異物を区別する巧みな仕組みではないかと考えています(図1)。私達は現在、一つ一つのタンパク質の持つ機能・役割を解き明かすだけでなく、このような異種タンパク質間の分子複合体が、薬物の生体内での挙動、効果、副作用とどのような関係にあるかを解明しています。

もう一つの柱は、細胞レベルあるいは試験管レベルで観察される薬物と生体分子(トランスポーター、酵素、レセプターなど)との関係から、生理学的薬物速度論と呼ばれる理論に基づき、個体レベルあるいはヒトにおける現象を評価・予測する研究です(図2)。薬物動態学や薬物治療学の分野では、分子生物学的な研究が進み、薬物に対する生体側の反応が個々の生体分子による反応として捉えられるようになっています。つまりこれまでの研究は、生体反応というマクロな反応を、生体分子による反応というミクロな反応に突き詰めるやり方です。一方で薬物治療においては、研究で明らかとなった生体分子の反応を、再び個体レベルに積み上げることが求められます(図2)。その場合、個々の細胞に特異的なそれぞれのタンパク質の活性を評価し、数学モデルに組み込む必要があります。それによって試験管レベルで明らかになった事象を基に、ヒト個体レベルを予測することができます(図2)。私達は、トランスポーター、酵素、アダプター研究においても、常に個体レベルでの事象と照らし合わせながら研究を進めることによって、薬物を安全かつ有効に利用できるよう、最適な投与設計を追究する研究を展開しています。
現在、当研究室で動いているテーマには次のようなものがあります。
- 小腸、肝臓で働く薬物トランスポーター・アダプターの解明と薬物治療への応用
- 慢性特発性血小板減少性紫斑病の薬物治療研究
- 皮膚に発現するトランスポーターを利用した経皮薬物治療
- トランスポーターを標的とした脳内薬物治療

最近の主な発表論文
- Shimizu T, Sugiura T, Wakayama T, Kijima A, Nakamichi N, Iseki S, Silver DL, Kato Y. PDZK1 Regulates Breast Cancer Resistance Protein in Small Intestine. Drug Metab Dispos, in press.
- Takeuchi K, Sugiura T, Umeda S, Matsubara K, Horikawa M, Nakamichi N, Silver DL, Ishiwata N, Kato Y. Pharmacokinetics and hepatic uptake of eltrombopag, a novel platelet-Increasing agent. Drug Metab Dispos 39(6): 1088-1096, 2011.
- Sugiura T, Otake T, Shimizu T, Wakayama T, Silver DL, Utsumi R, Nishimura T, Iseki S, Nakamichi N, Kubo Y, Tsuji A, Kato Y. PDZK1 regulates organic anion transporting polypeptide Oatp1a in mouse small intestine. Drug Metab Pharmacokinet 25(5): 588-598, 2010.
- Sugiura T, Kato S, Shimizu T, Wakayama T, Nakamichi N, Kubo Y, Iwata D, Suzuki K, Soga T, Asano M, Iseki S, Tamai I, Tsuji A, Kato Y. Functional expression of carnitine/organic cation transporter OCTN1/SLC22A4 in mouse small intestine and liver. Drug Metab Dispos 38(10): 1665-1672, 2010.
- Kato Y, Kubo Y, Iwata D, Kato S, Sudo T, Sugiura T, Kagaya T, Wakayama T, Hirayama A, Sugimoto M, Sugihara K, Kaneko S, Soga T, Asano M, Tomita M, Matsui T, Wada M, Tsuji A. Gene knockout and metabolome analysis of carnitine/organic cation transporter OCTN1. Pharm Res 27(5): 832-840, 2010.
教員紹介
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加藤 将夫 教授
専門分野
薬物治療学、薬物送達学
所属学会
日本薬学会、日本薬物動態学会、日本薬剤学会、日本薬理学会、日本DDS学会、American Association of Pharmaceutical Scientists (AAPS)、International Society for the Study of Xenobiotics (ISSX)、American Society for Cell Biology (ASCB)
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中道 範隆 准教授
専門分野
薬物治療学、細胞薬力学、細胞薬理学
所属学会
日本薬学会、日本薬理学会、日本神経精神薬理学会、日本神経化学会、International Society for Neurochemistry (ISN)、Asian-Pacific Society for Neurochemistry (APSN)
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杉浦 智子 助教
専門分野
薬物治療学、生物薬剤学(トランスポーター)、薬物送達学
所属学会
日本薬学会、日本薬物動態学会、日本薬剤学会、American Association of Pharmaceutical Scientists (AAPS), International Society for the Study of Xenobiotics (ISSX)
